コンビニで手軽に缶のお酒を買って飲む。
ステイホーム中のオンタイムはテレワーク、オフタイムは配信サービスで映画や音楽を楽しむ。
自宅に居ながらにして生活の全てが不自由なく完結する時代にあって、
【場】(BAR)にどんな存在意義があるというのか?
こんな問いが企業のPR担当者や経営者から聞こえてきます。
消費者はネットでの購買活動が主なのだから、ネット広告に力を入れようと。
これまで私が接してきたそんな声には共通の落とし穴があるように思います。
それは、ネット広告等で高いPVを獲得(またはTVCMで多く視聴)し、多くの買い手(飲み手)の目に留まりさえすれば、商品は売れていくものだ。というものです。
自分自身を顧みても、類似の体験をしたことがない、そもそも興味もたいしてないモノの広告が目に入ったからといって、購買行動に移った経験がどれだけあるでしょうか?
さまざまなネット広告やTVCMには毎日何度も何度も接している訳で、目に入っただけで買っていたら当然すぐにお金もなくなります。
ちょっと考えれば自分自身はしないのに、買い手(飲み手)はするのではないかと思ってしまう落とし穴です。
例えば、、
日本酒愛飲層のメインは高齢者で、コアなファン以外の一般的な若い人は日本酒を飲まない、なんとか新たな飲み手を創造したい。
そのために芸能人やアニメとコラボする、、ネット広告に力を入れて動画PRに投資する、、あの手この手でPRするものの、まったくといって良いほど新しい飲み手は創造されていない。
ではどうしたら良いのか?
一般的な日本酒を飲める【場】(BAR)を増やす。既存の日本酒専門店ではなく、一般的な料飲店で一般客が普通に日本酒を飲む環境を開発することです。

※MOTOZAKEはカクテルベース日本酒として2021年に生まれた初めての統一ブランドです。
重ねて言いますが、既存の日本酒専門店ではなく一般的な料飲店でです。
近代の新たな飲酒文化は全て料飲店発で生まれてきました。
競合の酒類がなかった時代はどこの店でも清酒しかなかった。
以降…
バーだけでなく和食店で飲まれるようになってブームとなったウイスキー。
和食、居酒屋、スナック等でウイスキーのメニューに取って変わった本格焼酎。
某チェーン居酒屋のメニューとして全国展開とともに広がった酎ハイの甲類焼酎。
イタリアンレストランの拡大展開、浸透に併せて飲まれるようになったワイン。
ハイボール料飲店展開で復権したウイスキー。
某芸能人が居酒屋で飲み尽くしたところから広がったレモンサワー。
どの酒を取っても、始まりは料飲店であり、そこで一般客が体験を重ね、それが紡がれて新たな飲酒文化が創造されました。
実際の体験の重なり無くして売れた酒というのは無いのです。
酒類に限らず、企業のパイロット店舗でも、
【場】(BAR)は、この体験の重なりを生み出すことが存在意義であり、そこにはますます、“非日常”や“承認”、“感動”や“喜び”などなどの高い付加価値が求められるようになっています。
環境開発計画 山本 利晴