2024年04月27日

“美味しい”や“ブーム”と『売れる』とは違う

このブログ記事でも何度か取り上げてきましたが、

「ウイスキー」ブーム、「ジン」ブームなどと、

その本質を履き違えて、地酒蔵元が洋酒づくりに参入する、

そんな事例が近年、枚挙に遑がない状況であります。


そのほとんどが、

本業である「清酒」が売れないからといって、

売れそうな、“ブーム”と言われる他の土俵の洋酒に、

安易に手を出しているわけですが、

その実、“ブーム”と『売れる』が違うのだという実例が、

また最近の実績として証明されました。


それが【クラフトビール】市場ですね。


2017年頃から始まった”第2次クラフトビールブーム”と言われる状況下、

毎年伸びているように伝えられ、前年比200%などと報じられた年もありました。


しかしその実、

先日発表されたクラフトビール国内出荷数量は、

コロナ前の2019年比24%増ながら、

国内のビール系飲料全体の市場に占めるシェアは0.95%とほぼ横ばいとのこと。


要はこれは、クラフトビールが”ブーム“なのではなく、

“ビール”全体が少し酒類全体に占める構成比を上げたのに引っ張られて、

そのシェアは変わらないまま、単体で見て伸びた伸びたと言っているだけということですね。


しかも、クラフトビール醸造場は3年間で200社以上増えているとのこと。

加えて、大手ビールメーカーK社の某クラフトビール銘柄も、

クラフトビールの出荷実績に加えているため、

小さなクラフトビール醸造場は実際にはまったく伸びていない、

もしくは売れずに苦戦しているところがほとんどと言って良い状況と分析できます。


このような状況は「ウイスキー」や「ジン」でも同様に起きています。


特に「清酒」は、そろそろこの洋酒の“ブーム”だとか、

酒の酒質、品質は年々“美味しく”なっているとか、そういうことに乗せられることなく、

自らの土俵で新しい飲み手を増やす、新市場創造の取り組みを、始めませんでしょうか?


取り組みのスタートを後ろ倒しにすればするほど、

清酒復権の機会は遠退いていってしまうのですから。

環境開発計画 山本 利晴
タグ:酒類業界
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2024年04月20日

夏の生酒2024試飲会にて

4月というのに先日は、

新潟、秋田、山形で30度超の真夏日になりましたね。。


温暖化の影響か、お酒に関連する作物も、

どんどん北へ北へと主産地が移るようにも言われています。


先日、宮城の蔵元さんとお話した際にも、

「ゆず」の北限は宮城だったのに、今は岩手まで北上したとのこと。


さらには酒を醸すための「米」も、

今年もなかなか思うような質のものでなく“硬い“ため、

各蔵元、その造りでは苦労しているとのことでした。


実際先日、今年の“夏の生酒“試飲会に参加させていただき、

数十種類のお酒を試飲させていただきましたが、

例年以上に各蔵元間の味わいの方向性が大きく異なるように感じました。


これまでは、「今年の夏の生酒はだいたいこういう味わいの傾向だな」と感じられていたものが、

今回は、酸味が際立つもの、キレイで料理に合わせやすそうなもの、

かなり分厚く、それ単体で食後に楽しんだ方が良さそうなものなど、

一つ前に試飲したお酒と次のお酒がまったく異なる味わいで、

試飲が困難だと思う並びもあったと感じました。


会場でお話しをお聞きすると、

こうした「米」の品質は、温暖化に伴ってか今後も続くと予想されることから、

今後も難しい造りが求められるであろうとのことでした。


蔵元によっては他から米を買うのを極力抑え、

自社農園を経営し、そこからの米を中心に酒造りを行うコンセプトを立てるところもあり、

田を観光資源として、インバウンドを中心にツーリズムを組むことまで想定しており、

日本酒もさらに“モノ”としてだけでなく、

“コト”“トキ”を付加価値として売る必要性が高まっていると改めて感じました。


今回の“夏の生酒”試飲会ではそんなことを考えさせられる機会となりました。

環境開発計画 山本 利晴
タグ:雑感
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2024年04月13日

和酒の酒造による地ウイスキー販売の今

先日、日本酒のある試飲商談会に伺った際、

ある、ウイスキーも手がける和酒の醸造会社のブースにて、

現状の地ウイスキーのボリュームをお聞きしたところ、

なんと、売上の8割、製造量の6割をウイスキーが占めるとのこと。


自社の日本酒の販売を伸ばす“手“が無い蔵元が、

洋酒(ジンやウイスキー)に走るのはこういうことかと頷けるほどの、

私の想像を超えるボリュームでした。


しかしながらその醸造会社の担当者の方は、

「ウイスキーが良いのは“今だけ“なので、日本酒を伸ばさなければ」

とおっしゃっておられました。


決してウイスキーブームに溺れることなく、

本来のウリを伸ばさなければ中長期的に先は無いことは、

ご理解されているようでしたが、

いかんせんその実現のための“手“が無いというのが本音のようです。


改めて和酒の酒造による地ウイスキーの今、

洋酒に手を出す(しかない)蔵元の現状を見たように感じました。


これから新しく洋酒に手をだすような和酒メーカーは論外として、

清酒醸造会社、特に市場を牽引すべきNBメーカー社は、

こうした危機感をどの程度持っているでしょうか?


中小零細の蔵元や醸造会社はより強く感じているこの危機感。


『飲み場をつくる』ことに尽きる、

大手清酒NBメーカーが牽引すべきである新市場創造の取り組みは、

待ったなしの状況ではないでしょうか。

環境開発計画 山本 利晴
タグ:酒類業界
posted by B.A.R planning at 12:00| 環境開発計画