いわゆる“パック酒”の勉強をしようと、
各社の定番パック酒を飲み比べたことがありました。
その際にも、これらは“パック酒”として認知、
また、価格戦略含めて家庭用市場のみを狙っているため、
“安酒”としてのイメージが固まっているものの、
その品質は各社高く、正直、ブラインドでテイスティングして、
地酒の各ラインナップと優劣をつけられる人は多くないだろうと思うほどでした。
最近も、違う角度からその造りの質の高さを実感する機会がありました。
伝統的な生酛造りにこだわる、
日本を代表する老舗蔵の一つである某メーカーの、
「本醸造 樽酒」
これを、とある持ち寄りの交流会に持ってきた方がいて、
だれにも飲まれず余ったため、頂いて帰ったところ、
その製造年月を見てビックリ!
『2014.12』だったのです。
一般家庭に10年以上ただ置かれていた酒。
瓶にも少々汚れが付着しているレベルの保管状態でしたので、
中身の酒はどんな状態にあるのかと興味深く開封してみました。
注ぐと、確かに色はメイラード反応で深い茶色になっていましたが、
その香りと味わいは、決して不快なものではなく、
むしろスッキリとした樽酒ならではの心地よさも残っており、
冷やでもスッキリ、燗にしても酒の劣化を感じることなく、
深い旨みを感じることができました。
蔵で古酒用にしっかり管理された環境下のものでなく、
団地の一家庭にただ置かれていたような環境下で10年以上経った酒でも、
これだけの高い品質で愉しむことができる酒を醸す大手メーカーの酒造り。
日本の麹文化の酒は、蒸留酒はもちろんのこと、
醸造酒、清酒もしっかりした戦略で臨めば、
新市場創造、新たな成長曲線を描くことができると再確認できた、
素晴らしい経験でございました。
ただ、こうした高い酒質、造りに触れると尚更、
現時点でもその「新市場を創造する戦略」をもって臨む清酒メーカーが、
私には見られないことが余計に残念でなりません。
環境開発計画 山本 利晴