「ウイスキー」ブーム、「ジン」ブームなどと、
その本質を履き違えて、地酒蔵元が洋酒づくりに参入する、
そんな事例が近年、枚挙に遑がない状況であります。
そのほとんどが、
本業である「清酒」が売れないからといって、
売れそうな、“ブーム”と言われる他の土俵の洋酒に、
安易に手を出しているわけですが、
その実、“ブーム”と『売れる』が違うのだという実例が、
また最近の実績として証明されました。
それが【クラフトビール】市場ですね。
2017年頃から始まった”第2次クラフトビールブーム”と言われる状況下、
毎年伸びているように伝えられ、前年比200%などと報じられた年もありました。
しかしその実、
先日発表されたクラフトビール国内出荷数量は、
コロナ前の2019年比24%増ながら、
国内のビール系飲料全体の市場に占めるシェアは0.95%とほぼ横ばいとのこと。
要はこれは、クラフトビールが”ブーム“なのではなく、
“ビール”全体が少し酒類全体に占める構成比を上げたのに引っ張られて、
そのシェアは変わらないまま、単体で見て伸びた伸びたと言っているだけということですね。
しかも、クラフトビール醸造場は3年間で200社以上増えているとのこと。
加えて、大手ビールメーカーK社の某クラフトビール銘柄も、
クラフトビールの出荷実績に加えているため、
小さなクラフトビール醸造場は実際にはまったく伸びていない、
もしくは売れずに苦戦しているところがほとんどと言って良い状況と分析できます。
このような状況は「ウイスキー」や「ジン」でも同様に起きています。
特に「清酒」は、そろそろこの洋酒の“ブーム”だとか、
酒の酒質、品質は年々“美味しく”なっているとか、そういうことに乗せられることなく、
自らの土俵で新しい飲み手を増やす、新市場創造の取り組みを、始めませんでしょうか?
取り組みのスタートを後ろ倒しにすればするほど、
清酒復権の機会は遠退いていってしまうのですから。
環境開発計画 山本 利晴
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